県展奨励賞

鳥取県展で奨励賞をいただきました。
以下が展示スケジュールです。
鳥取県立博物館 9月14日(土)~9月23日(月)
米子市立美術館 10月5日(土)~10月14日(月)
日南町美術館 10月18日(金)~10月27日(月)
倉吉博物館 11月9日(土)~11月15日(金)

 

 

私が高校生の時、3年間お世話になった美術の先生が今年は審査員をされていて(部門が違うので私の作品の審査には関わってないと思うけど)、なんとなく懐かしいなと思った。
それとはまた別に、新聞やネットニュースで知ったのだけど、6月に多摩美にいた本江邦夫先生が心筋梗塞で、70歳で亡くなられていた。
本江先生は院生の講評に出られるので、私は直接指導されたことはないのだけど、卒業後、銀座で個展をしたらギャラリー巡りをしていた本江先生にたまたま展示を観てもらえた。
私のポートフォリオを見ていた本江先生に「この小作品、本江先生が購入してくださいましたよね?!」と話しかけたら「洒落た作品だね」と言って、帰り際に、目を見ずに「諦めないでね」と言って去って行った。
新聞で訃報を知った時、銀座のギャラリーで会った、知的で、シャイな本江先生らしいそんな思い出が蘇った。
何故、本江先生が私の過去の作品を買っていたのかというと、学生時代チャリティー版画を芸祭や美術館で売る伝統がうちの学部にはあって、大体1枚1000~2000円で学生が小作品を出していた。
半分は寄付(大学に寄付するのではなくて、震災の義援金とかになる)、半分は学生本人にお金が入るのだけど、金額の大きい小さいよりも「沢山ある作品の中から自分の作品を選んで購入してくれた人がいる」というのが喜びだった。
中にはギャラリーオーナーや有名コレクターがいて、その中に本江先生の名前があった(2枚も買ってくれていた)
本江先生は抽象の作家が好きなイメージがあったので(抽象絵画の魅力を中高校生向けに書いた「〇△□の美しさって何? 20世紀美術の発見」とか面白い)、私の作品を買ってくれたのはなんとなく意外だったけど、それが大学生の私にはとても嬉しかった。
あと、私は経済的な理由で院には進まなかったけど、働きながら絵を描き続けようと思ったのは、版画ゼミの滝沢先生が卒業した時に、私が「卒業して、プレス機もないし、どうやって続けたらいいのかわからない」等の弱気な発言をしたら「卒業後が勝負ですよ」と言われたからかもしれない。
本江先生も滝沢先生も発言そのものはおろか私のことすら覚えていないだろうけど、私はその二人の言葉を思い出すと「それもそうだよな」と腑に落ちて、また絵を描こうと思う。
現実を生きていると、いっぱいやらなくちゃいけないことがあって、色んな人が色んなことを無責任に言ってきて、混乱するというか怒りがわいてくることもあるけれど、どんな絵を描こうかなとか、技法のことや展示方法を考えたりしていると、私は細部に渡ってイメージを膨らませ、それに伴うアイデアを出そうとしていると、新しいことが生まれてくるようなわくわくを感じる。
作ってみて、「あれ?それほど良くなかった」と思うことが殆どだけど、きっとまた次に作る作品はこれよりいいものが出来上がるだろうと思える私はとても楽観的なのだろう。
美術界に沢山の功績を残されて、私のような者までサラッと励まして、退官された年に亡くなるなんて、本江先生は最期までクールな人だ。