第9回山本鼎版画大賞展に入選しました。
展覧会は山本鼎が住んでいた長野県で行われます。
山本鼎は版画家として有名だが、それは明星に「漁夫」という自分で描いて彫って刷った版画を発表したからだ。
それまで日本の浮世絵等の版画は分業制で、要するに版画はアートというより印刷物(大衆メディア的な)だったのだが、それを作家物にしたのが山本鼎である。
と、ざっくりした説明を授業でもしたりする。(明星はアイドルが出てる雑誌ではなくて、与謝野鉄幹が主催してた文芸誌だよって)
しかし、山本鼎はそれだけでなく留学していたり、従兄弟の村山槐多に画材を与えたり、児童の自由画を推進したり、結構色んなことをしている。
学校の図画の先生だったので、見本を模写するのではなく子どもには自由に描かせよ、という運動をした人でクレパスとかもこの人の発明品だったりする。
まぁ、その子どもに自由に描かせよの教育の弊害で日本の美術教育は「何やってもいいフリーダムな時間」みたいになっているので、結構そのあとの先生たちが苦労するのだけど・・・。
確かに、見本を見て、見本の通りに描けたらいい点数がもらえるっているのは間違っていると思う。
でも、好き勝手描かせて何も教えないのは違うんじゃないだろうか?
要するに、山本鼎の児童自由画運動のあと、間違って解釈していたんじゃないか、と私は思う。
あくまでも、私の肌感覚だけど、全然何も教えられない人が多すぎじゃないか?
私が習った先生たちもモチーフを与えて(もしくは教材のセット)自由に描きなさい、作りなさいの放置、が多かった。
物の観方を教えないから絵が描けない、作家を教えないから作品に興味が持てない、歴史を教えないから美術を難解なものに感じる、油や版画の技法を教えないからイラスト描く人ばかりが増える、和紙や陶芸などの伝統工芸を授業に取り入れないから後継者も増えない・・・etc
日本はすごい美意識の高い国で、画材だって世界中のものが手に入るし、美術を学ぶには恵まれた環境なのに、世界的に通用するアーティストがなかなか出てこないのは、この「自由の履き違え」があるんじゃないだろうか。
楽しく自由に子どもらしく描きなさいと育てられて、美術が好きになった子どもが美術に対して地道な努力をするかなぁ・・・?
音楽にしろスポーツにしろ、何にしろ毎日の地道な練習とか基礎的な力とかを学生時代に培うものだと思うんだけど。
そして、それはそこまで楽しくない(笑)
でも、それをずっと続けている人が色んなことを発明して、色んな業績を残してきたんじゃないかと。
それは、まるで山本鼎のように。
山本鼎版画大賞展
会期 2024年9月28日(土)~11月17日(日)
9:00~17:00(最終日は16:00まで)
会場 サントミューゼ 上田市立美術館2階展示室