銅版画の技法について

時々、技法について尋ねられるのですが、一言で説明するのは難しいです。
大体、私は「小学生の時に木版画をやりませんでしたか?木版は彫った所が白くなりますよね?銅版画は逆で、溝にインクを詰めてプレスするんですよ」(凸版と凹版の違い)とか「10円玉の銅です、あの板を腐蝕させて版を作っているんです」(身近な物で伝える)などと説明するのですが、毎回「は??」という顔をされます・・・。
やってみるのが理解するのには一番早いんですけどね。なかなか設備がなくて、試してみるチャンスがないかもしれません。
あと、私の場合はオーソドックスなやり方ではなく、自分で技法をアレンジしている部分があるので(人に指導する時にはオーソドックスなやり方を伝えますが)、説明しづらい部分もあります。
一応、簡単に説明すると・・・

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腐蝕する前の銅板はこんなにピカピカです。
(映り込んでいるのは私ではなく、イラストレーターのclaraちゃんです)

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その銅板にグランドという保護膜を塗って、乾いたらニードルという針のようなもので描いて、第二塩化鉄とか硝酸とか酸性の液体に入れてニードルで引っかいた部分を腐蝕させていきます。
銅像やお寺の屋根が青緑色になっているのを見かけたことはありませんか?
あれは銅が酸性雨などで腐食されて緑青(ろくしょう)が出ている状態です。
簡単にいうと保護されている部分は腐らないけれど、ニードルで保護膜を引っかいた部分は腐って、溝になっていく→それがエッチングの技法です。
・松脂を使ってグレートーンを作る→アクアチント(広い面積で腐蝕させる)
・アラビアゴムと砂糖を混ぜたもので描いた線を腐蝕させる→シュガー・アクアチント(筆で描いたような線が表現できる)
・ニードル等で直接引っかく→ドライポイント(インクが引っかかる為に滲んだような線になる)
・ビュランで直接彫る→エングレービング(お札の絵などはこの技法で彫られている)
・目立てをした版を削っていく→メゾチント(まっ黒の画面を消しゴムで描いていく感じ)
その他に、写真を使って製版することもできますし、レースや葉っぱの模様を張りつけることもできますし、面で腐蝕させて一版多色刷りすることもできます。
私は水のようなマチエールが欲しかったのでグランドをマーブリングしてアクアチントをかける技法を生み出しました。
生み出したと言っても、一版多色刷りを発明したアトリエ17のヘイターさんやメゾチントの自動目立て機を作ってしまう深沢先生に比べたら、大したことではないのですが・・・。
そんな感じで色んな技法を使って、実験のようなことをしながら製版していきます。
版が完成したらインクを溝に詰めて、プレス機に版と紙を置いてプレスします。
簡単にいうと、そんな感じです(笑)!

銅版画をやってる方からしてみたら「この説明は省略しすぎだよ!」ってツッコミたくなるでしょうし、やったことない方からしてみたらチンプンカンプンかと思われます・・・。
10月のグループ展では徳持先生による版画レクチャーが行われるので、興味のある方はご参加ください。
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