やりがい搾取

国立西洋美術館の求人が話題 こんなにハイスペックなのに時給1240円?!

国立西洋美術館で研究補佐員が募集されていて、その内容がネットニュースになっていた。
条件が「西洋美術専攻で、修士以上でフランス語など2ヵ国語が翻訳できて美術館での勤務経験あり」というハイスペックな人を求めているのに、月給12万円程度という募集内容だったから「そんな奴おるんかい!」という話だった。
いや、いる。
美術界は院卒で教職やら学芸員やら芸術士やら資格を持っていても、それを生かせずにバイトしながら(それもバイク便とか全く別ジャンルで)何かを夢見ているピーターパン・シンドロームな人間がゴロゴロいる。
田舎で親が泣いてるぞ!と言っても無駄である。
彼らはピーターパンなのだから。
看護師か何かやってる面倒見のいいウェンディーでも見つけて寄生するしかない。
何故、彼(彼女)らはどんどんハイスペックになっていくのに、社会とかけ離れていくのか?
それは学者とか研究者と同じだからだ。
30すぎても、留学したり博士号取ったりする人がいるけど、それは箔をつけたら大学の仕事とかにありつけるかな~と目論んでいるような気がする(それよりは人間関係、つまりコネの方が重要だと思うが)
そして、やればやる程、自分はまだまだだと思うからどんどん追及していく割に仕事はない。
私はこの求人を見て、一番大事なのは「協調性」なんじゃないかと思った。
これだけの西洋美術オタクは何らかの専門があって、その分野、その時代、その画家には深い造詣を持っているが、他のことをあまり知らなかったり、チームプレイが苦手だったりする。
それよりは学士でもいいから、西洋美術を学生の時に専攻していた社会人経験がある人をバイトで採用して、1年後に学芸員の本採用の試験するからバイトの間に勉強してね、というスタンスにした方がオールマイティな人材が育つのではないだろうか。

 

ネットでこの求人が話題になったのは報酬が安くても頑張る「自己実現ワーカーホリック」や「やりがい搾取」に結びついているからである。
給料安くてもやりたいことができて幸せでしょ?みたいな。
専門知識を持っている人材にはそれ相応の対価を支払うべきだし、安く雇いたいならレベルを下げて入ってきた人を育てるべきだ。
それを美術界はしない。
ハイスペックで奴隷になる人間が欲しいだけだ(若くて文句を言わない奴が一番使いやすい)
ボランティアや安いバイトを使って、ガミガミ怒って、「こんなことも知らないの~?」とバカにして自分が優越感を得る為だけの使い捨ての駒が欲しいだけ。
それで、人一人の人生を潰したところで、次から次へとカモは現れる。
今、各地で町興しイベントでアートを利用しているけど(越後妻有と瀬戸内芸術祭が成功してるから)、全然専門外の役人のオジサンたちが運営して、地元のオジサンたちが反対してイベントを潰して、若いアーティストやボランティアスタッフが振り回されている。
こういう阿漕なことを個人でやってる人もいたし(ex.若いイラストレーター志望の人を「君の勉強になるから」と使いっぱしりにしていた自称アーティストのオジサンとか)、私の住んでいる所でもやりかけて頓挫していた(ex.うちの近所でアーティスト・イン・レジデンスで作家を呼んだ直後に地元住民が反対して作家が住む場所を使えなくしていた)
こういうことが地方だけでなく、全国的に行われていて、それも国立の美術館がやっちゃうんだね、と思った。