今度は最近読んで面白かった漫画の紹介です。
・絶望名人カフカの人生論
絵=平松昭子 監修=頭木弘樹
同タイトルの本の漫画化です。すごい絵と組み合わせたな~と思いました。
フランツ・カフカはある朝、目が覚めたら巨大な虫になっていたという「変身」が一番有名ですが、生前は今ほど有名作家ではありませんでした。
保険の仕事をしていて、小説は夜に執筆していて、その内に体を壊し、彼の死後、友人の作家が作品を纏めてくれたそうです。
私が小説以外で知っていたカフカはそのような感じで、大体、みんなが知っているカフカもそのような認識だろうと思っています。
絶望名人~には我々と同じように愛に悩み、健康を異常に心配し、仕事と制作の狭間でイライラして、自分の将来に不安になるカフカの人間らしい姿が見て取れます。
ていうか、不安になりすぎだろ!!と思うぐらい、全てに二の足を踏んで行動しません(特に、結婚に関しては3回婚約し、3回とも破棄しています)
最初は「カフカ、ヤバイな~」と思って読んでいたのですが、だんだん自分との共通点を見つけ始めてしまいます(私は不眠症なのとパンの為の仕事をしたくない所と異性とは手紙のやりとりが調度いい所が共通点です)
病気になっても絶望しないのも似ています。
病気になり、私もカフカのようにそのまま死ねたら良かったんですが、うっかり生き残っちゃったので、そこからが大変でした。
入院してた時の方がまだマシだったと思うほど、社会復帰するのがしんどかったです。
・「描かない漫画家」全7巻
えりちん
連載当時、漫画家とイラストレーターの中間のような仕事をしている友人に何の気になしに貸したら、ストーリー漫画を一度志したことのある者にとっては恐怖の書だったらしく「私、こんなんじゃないよね?!」と必死の形相で訊かれました。
そんな深い意味はありません・・・。
子どもの頃、漫画家に憧れて、実際に漫画を描いて賞を獲ったり、デビューをしたことがある人というのはずっと漫画に対して何か思う所があるらしく、漫画について語ったりしますよね。
1人だけでなく、そういう知り合いが数名おります。
彼らにとって漫画は仕事あり、夢でもあるようです。
次に紹介する東村さんほど売れて、連載を何本も抱えていたら、夢どころではないでしょうが・・・。
漫画家ではありませんが、ビックマウスの割にやることがしょぼい(実力がない)アーティスト(アーティストって言うのかな?)も沢山見てきましたが、関わるだけ無駄でした。
彼ら(彼女ら)は同世代であったり、年上であったりしたのですが、共通点はみな「自己愛が強すぎて、自分の作品を冷静に観れていない」という所です。
そして、子どものように周囲から賞賛を得ようとしたり、他人を自分のアクセサリーのように利用して、自分を大きく見せることに必死な様子でした。
自分がやりたいことだけをやって、周りからはどう思われてもいいと思っている自分には理解不可能な人種でした。
彼らは描かない漫画家の主人公のようにブレイクスルーすることは一生ないであろうと思われます。
・「かくかくしかじか」全5巻
東村アキコ
金沢美大の油絵科出身の東村さんが高校~大学~漫画家デビューまでの道を絵画教室の先生中心に描いたエッセイ漫画です。
美大受験を経験した人間はみな「わかる、わかる」とうなづけます。
美大生ってハチクロみたいなイメージがあるのか、なんかオシャレでかわいい感じ?好きなことに夢中になっている女の子☆みたいなイメージ?があるのか、私は世間様のぶつけてくるいい加減な言葉に「そうじゃないよ」と憤りを感じて生きてきました。
音大生が毎日レッスンするのと同じように美大に入るのに毎日ようわからんオッサンの石膏を何浪しているかわからんオッサンたちと同じ教室で黙々と描いたり、熱血講師や毒舌講師や変態講師にボロカス言われたり、苦労して入って、高い学費を払った割には卒後、職がなかったり(まぁ、殆どの人が就活しないのですが)、何かとっても理不尽な世界なのです。
だけど、その中でしか出会えない人たちもいて、日高先生のように本格志向の人もいたのでした。
受験の時にお世話になった予備校の先生で日高先生のように印象に残っている人を一人挙げるなら、新美の傍嶋先生です。
(現在は予備校を辞められて、悠悠自適に暮らされているようです)
半年ぐらいしか習ってないので、向こうは覚えていらっしゃらないと思いますが、傍嶋先生に出会えていなかったら、私は大学に受かっていなかったので、勝手に恩を感じています。
日高先生のように生き様に作家性が滲み出ていたり、プライベートでお世話になったり、という感じの先生ではなく、「受験のプロ」って感じでした。
まぁ、受験は最終的に受からせてくれた先生が自分にとって一番の先生だと思います。
熱い交流があった所で受からなければ、良い先生ではありません。
(私がそういう熱い講師が苦手な所為もあるけど)
社会人になってからも、自分にとって仕事のしやすい人は「話が通じる人」です。
一方的に熱い思いをぶつけてきたり、独りよがりに仕事を進めて、全くコミュニケーションの取れない人は「困った人」です。
そういった意味でも傍嶋先生は生徒一人一人がどういう素質を持っていて、どういう絵が好きで、どういう風に成長させて、受験に臨むのがベストなのか見抜いた上で、押しつけがましくなくアドバイスをくれる先生でした。
今、思うとなかなか難しいことですよね。