旅する版画

 東京に住んでいた時、銅夢版画工房に通って制作を続けていた。そこで知り合った方たちと鳥取でグループ展を開催します。
鳥取在住なのは私とフジタさんだけで、あとの4人は東京にいるのだけど、版画は小さい作品が多いので、送ってもらいやすい。これが油絵とか彫刻だと送料だけで大変なことになる。公募展も割と送りやすい。版画だと紙なので、海外にも送りやすい。浮世絵がヨーロッパで流行ったのも納得できる。19世紀、パリで万博が開かれて、そこに出品された日本の工芸品や屏風が注目されてジャポニスムという趣向が起こったのだけど、浮世絵はその工芸品を包んでいたらしい。今、どの参考文献ですと云えないのだけど(何で読んだか不明)、そういうチラシ的な役割であってもおかしくないくらい日本で浮世絵は安かった。かわいい町娘や美しい花魁はファッションリーダーとして描かれ、美人画の浮世絵はブロマイド的役割であり、東海道五十三次などは旅気分を味わうものだった。要するに、庶民のメディアであるから弁当と同じくらいの値段だったらしい。
 浮世絵を通して、日本が大好きになったゴッホは影が描かれていない浮世絵を見て「影が出来ないほど光に満ちた明るい国なんだ」と思い込んで、日本に憧れて南仏のアルルに行く。モネは庭に日本風の太鼓橋を作って蓮の花を池に沢山植えて、それを繰り返し描いた。ジャポニスムの画家たちは浮世絵から、行ったことのない極東の島国にイマジネーションを膨らませて楽しんでいた。
 今回のグループ展の間、自分の個展があるから鳥取に来れない人もいるんだけど、絵だけ見て「きっと内面も外見も美しい人に違いない」と思わせてくれるような作品ばかりになると思われる。いや、実際みなさんすごく素敵な方たちですが。作家に会って、話すのも良いけれど、作品のみ観るのも良いものだ。

期間 9/26(木)~10/1(火)
会場 ギャラリーそら